一方で、李在明氏の最近の発言には「日本国民を愛し、その方々の謙虚さ、誠実さ、礼儀正しさにつて非常に尊重している」などという言葉もある。日本の権力者や政治家は今も他国を侵略する野望をいだいているが、一般の国民は善良だから好きだ、とでも言いたいのだろうか。あるいは、日本人に対する社交辞令か。

 韓国では「良心的日本人」という言い方がある。韓国に帰化した元日本人で「竹島は韓国領」といっている人であるが、李在明氏はこうした人を評価しているのかもしれない。

 いずれにせよ、李在明氏の現代の日本に関する理解は全く的を外れていると言わざるを得ないものばかりなのだ。

隠そうとしない日本への対抗心

 李在明氏は、自身の政治スタイルについて外信記者クラブ懇談会で「理念と選択の論理を越える、国益中心の実用外交路線を堅持するというのが私の確固たる立場」と述べた。

 しかし、共に民主党の大統領候補補を選ぶ党内予備選で勝利した際の演説では、「日本の輸出報復に対して、短い期間で完璧に勝った」「日本を追い越し、先進国に追いつき、やがて世界を先導する国・大韓民国をつくる」と述べている。

 この日本の輸出管理強化に関して、追い詰められた韓国が戦略物資の国産化で危機を克服したというのは、文在寅大統領が国民向けに発言したパーフォーマンスにすぎない。確かに、コスト面で日本から輸入していた方が得だったものについては代替品を作るようになったが、高品質なものは引き続き日本から輸入している。完全に克服したと言える状況ではないのだ。

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 そんな事態を反映しない現大統領の発言を根拠に、韓国内の生産力・研究開発力に自信を持っているのだろうか。だとしたら、とても「国益中心の実用外交路線」とは思えない。

 このように李在明氏のこれまでの発言を見れば、未来志向的に聞こえる発言も実は「日本の謝罪」を前提としているものばかりだし、竹島や徴用工に関する李氏の意見は、日本政府としては絶対に受け入れられないものだ。外交・経済面で日本への敵愾心とライバル意識が染みついた李在明氏が大統領になれば、現在ですら史上最悪水準の日韓関係はいっそう緊迫したものにならざるを得ないだろう。