日韓の「戦後」が終わらないのは韓国内の保革葛藤のため

 韓国の革新系を中心とする人々の頭の中に「日韓の戦後処理が終わっていない」という意識があるのは、日韓国交正常化が保守政権、しかも軍部出身の政権によってなされたものであり、革新政権にとっては無効であるという思い強いからであろう。革新系の人々にとっては、韓国の国力が弱かった時代、しかも北朝鮮と対峙する中で、やむを得ず日本側の要求を呑まざるを得なかった中で行われた合意であるという考えがあるのである。

 このため、革新系の人々には、日韓国交正常化を評価せず、それを蒸し返すことに躊躇しない雰囲気が現在もある。要するに、日韓関係は一面で韓国の保革対立を反映したものでもあるのである。しかも李在明氏はその中でも強硬な発言が目立っている政治家だ。

 李在明氏は11月25日、韓国日報が主催したコラシアフォーラムにおいて、日本政府が「1965年に締結された韓日請求権協定ですべて解決した」と主張している元徴用工問題に関し、「国家間合意で構成員の人権侵害を合理化したり、個人的権利を処分することはできない」と述べ、日韓請求権協定を認めない考えを示した。

 これは朝鮮半島出身労働者の個人の請求権は消滅していないといった文在寅氏と共通する面があるが、同じ日の外信記者クラブ懇談会で李在明氏は「加害企業と被害民間人の間に行われた判決を執行しないということは事実上不可能」と述べており、日本企業の資産売却に慎重な姿勢に転じた文在寅氏よりさらに強硬と見るべきだろう。李在明氏が大統領となれば、日韓間で決定的な対立が生まれよう。

 一方で李在明氏は「被害者らの主たる立場は、お金は二番目の目的で、第一の目的は謝罪を受けたいというものだ。真剣に謝罪すれば、最後に残る賠償問題は現実的な案をどうにか探せると思う」とも述べ、日本側が謝罪さえすれば、元徴用工について日本側と協議し、落しどころを見つけていくといった姿勢を示している。一見、柔軟な態度にも見えるが、これは韓国側の一方的な立場である。「徴用工の問題は解決済み」とする日本政府との接点は全く見いだせない。

 李在明氏は、京畿道知事時代「親日残滓清算プロジェクト」を主導した。これは日本時代の習慣、あるいは日本式の名称や用語を変更したり、親日派とされる人の肖像を撤去したり、銅像・慰霊碑などへの説明書きを設置したりするものである。韓国から「日本的なもの」を取り除き、日本の影響を除去しようとする行為である。

 日韓の文化交流で相互への友情が高まっている時期にあえてこうしたことをするということは、日本を友好国と認めていない証拠と受け止められてもやむを得ないのではないか。