台湾侵略防止法案と台湾抑止力強化法案
11月16日のジョー・バイデン米大統領と中国の習近平国家主席とのオンライン首脳会談で米中双方は「自己抑制」で合意したかに見えた。
ところが、その9日後の25日、中国国防省の呉謙報道官はこう発言した。
「米軍は台湾や南シナ海で挑発行動に出ている。中国はこれに真っ向から対抗せねばならない」
「特に台湾問題については中国に妥協の余地はない。米国は(中国が妥協するなどといった)いかなる幻想も抱いてはならない」
「中国軍は常に戦闘力を持ち、いつでも(米軍と)戦える」
首脳同士が約束した「自己抑制」はどこへ行ってしまったのか。
事実、米軍は台湾海峡や南シナ海に頻繁に戦艦を出動させている。また米軍将兵が密かに台湾に常駐し、台湾将兵を軍事訓練している事実を台湾の蔡英文総統自らが公にしている。
武器供与は、米中国交樹立時に中国も認めた米国内法「台湾関係法」(Taiwan Relations Act)で認められている。
とはいえ、最近になって米高官が「台湾防衛のための軍事支援には、サイバーセキュリティも含まれる」(アン・ニューバーガー米国家安全保障担当副補佐官、セキュリティ防衛担当)とまで明言すると、中国も黙ってはいない。
呉謙氏はさらにこうまで言い切っている。
「台湾関係法は『一つの中国』の原則と米中間で取り交わしている3つの共同コミュニケの定めに著しく違反している」
米中外交関係に精通している米政府関係者は、中国政府の真意をこう分析している。
「中国の異常なほどの憤りは、バイデン政権の対中スタンスに向けられているというよりも同政権発足以降、共和党が党として強めている対中強硬策にある」