米国の水際対策を厳しく批判したWHOのテドロス事務局長(10月18日撮影、写真:ロイター/アフロ)

入国禁止令1週間前にすでに南アを出国

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が米国にも上陸した。

 感染者は11月22日に訪問先の南アフリカから米国に戻ったサンフランシスコ在住の米国籍者で、29日に陽性が確認された。

 自主隔離中で、症状は軽いという。感染者はワクチンを2回接種し、追加で打つ「ブースター」は受けていなかった。感染者と密接接触した乗務員、乗客は全員、陰性だった。

 ジョー・バイデン米大統領のコロナ対策の首席アドバイザー(ドナルド・トランプ前大統領に任命され、その後バイデン政権でも留任)のアントニー・ファウチ米国立アレルギー感染症センター(CDC)所長は、ホワイトハウスでの記者会見で、オミクロン株について従来の変異株よりも感染力が高く、ワクチンが効きにくい可能性があると指摘した。

 詳細な解析には早くて12月中旬まで要するとし、ワクチンやブースター接種、マスク着用といったこれまで通りの対策を徹底するよう訴えた。

https://www.cnbc.com/2021/12/01/us-confirms-nations-first-case-of-omicron-covid-variant-in-california.html

 バイデン大統領は、オミクロン株対策のため、11月29日以降、アフリカ南部8カ国からの入国を禁止した。だが感染者はその7日前に南アフリカを出国、米国に入国していた。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長(エチオピア出身)は11月30日、バイデン氏の決定をとらえて、南アフリカやボツワナなどの国々が「他の国からペナルティーを科されている」と述べ、各国による南アや周辺国に対する移動制限などの措置を暗に批判した。

 同事務局長は、2020年初頭、中国・武漢で最初に確認されたコロナウイルス感染当時から各国がコロナ禍で移動を制限することに慎重な姿勢を示してきた。

(ドナルド・トランプ大統領(当時)は「テドロス氏は中国のことをおもんぱかった」と厳しく批判していた。)

 テドロス氏は、今回も「自国民を守るための各国の懸念は十分理解するが、証拠に基づかない、それだけでは効果のない、露骨で包括的な対策を導入している加盟国もある」と批判した。