一方、数メートル飛ばされた暁生さんは、左下腿の開放骨折の他、脾臓損傷、顔面骨折、顔面創傷などの重傷を負い、その後、意識不明の状態で、耀子さんとは別の病院に搬送され、緊急手術を受けることになった。

 手術後、朦朧とする意識の中で、暁生さんはうわごとのように『耀子は・・・、耀子は・・・』と、繰り返していたという。

 暁生さんが、耀子さんの死を告げられたのは、事故発生から2日後のことだった。

「もし、私と位置が左右逆だったら、娘は助かっていたかもしれない・・・、警察からそう説明され、娘を守ってやれなかったことが悔やまれてなりません。なにより、私たち夫婦は大切な娘の命を奪われたことで、自分たちの未来さえ失ってしまった気がするのです」

事故現場に立つ波多野さん夫妻(筆者撮影)

赤信号を認識して交差点に進入、危険運転で起訴された加害者

 現行犯逮捕されたのは、現場近くで運送業を営む高久浩二容疑者(68)だった。事故状況は加害車両のドライブレコーダーにも映っており、信号は停止線の約40メートル手前ですでに赤となっていた。つまり、この事故は信号の変わり目での交差点進入ではなかったのだ。

 高久容疑者の供述によると、前方の信号が赤だと認識していたにもかかわらず、意図的に無視して時速約57キロで交差点に進入、横断歩道を歩いてくる波多野さん親子に気づかず衝突したという。