家族3人で撮った最後の家族写真

 冒頭の写真は、事故から5日後、耀子さんの遺体とともに撮影された、最後の家族写真だ。

 手術直後だった暁生さんは、医師から「今の容態では通夜や葬儀に参列することは難しい」と言われていた。しかし、そうなれば、家族3人で一緒に過ごす時間は、永遠になくなってしまう。

『せめて一目でいいから、耀子とパパを会わせてあげたい・・・』

 母親の切実な思いに応えた警察は、葬儀社、病院と連携をはかり、耀子さんの遺体を暁生さんの入院先まで運んだ。そして、なんとか最後の対面の時間を取ることができ、警察官が撮影してくれたのだという。

 今回、あえてこの写真を公開して訴えようと決意した理由について、波多野さん夫妻はこう語った。

「実は、事件から1年後、一度この写真を公開したことがあるのですが、今回、再度見ていただきたいと思ったのは、赤信号無視による悲惨な事件が相次ぐ中、一人でも多くの方に、横断歩道上の事故がいかに危険であるか、そして無防備な歩行者がどれほどひどい被害に遭うかを知っていただきたかったからです。耀子はもう帰ってきません。あの笑顔にはもう二度と会えませんが、とても正義感にあふれていた娘ですから、きっと同じことを思っていると信じています。あまりに理不尽なかたちで命を奪われてしまった娘のためにも、我々は生きて、いつか報告できるよう、引き続き訴えていきたいと思います」