自己矛盾に陥ったEUにできることはあるか?

 基本的人権や民主主義、法の支配を普遍的な価値観として重視し、人道主義を掲げるEUとしては、各国で試みられている国境管理の厳格化を公に認めるわけにはいかない。しかしそうした世論に背けば、かつてのように各国で反EU感情が高まる事態になりかねない。EUに唯一残された手段は「黙認」ということになる。

 気候変動対策への傾斜が物語るように、EUはグローバルなルールメーカーとしての立場を確立しようと躍起になっている。しかしながら、そのスタンスはともすれば独善的に映る。中東や北アフリカからの不法移民や難民の問題はEUにとってまさにアキレス腱だが、この問題に関する議論もまた、EUらしい自己矛盾を体現している。