アフガニスタンからの難民増加が見込まれることを受けて、欧州連合(EU)が揺れている。EUは2015年、シリアを中心に多くの難民が押し寄せる難民危機を経験した。域内各国で負担を押し付け合う形となり、反移民・難民を謳う民族主義政党が勢力を強める事態に陥った。その再来を、EUは警戒しているわけだ。
特に、慎重な姿勢を見せている国の一つが北欧のスウェーデンである。同国のロベーン首相は日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルとのインタビューで、2015年の難民危機のように多くの難民を受け入れる意思がないと明言した。同年にスウェーデンに対して難民申請を行った人数は約16万3000人、うち約4万2000人がシリアからだったとされる。
実際に承認された難民はそのうちの半数ほどとされるが、有権者の移民・難民対策に関する不満が高まることになり、2018年の総選挙(定数349議席)では極右政党であるスウェーデン民主党が62議席に躍進する結果につながった。2022年9月11日に次期の総選挙を控える与党・社会民主党にとって、移民・難民問題は鬼門そのものである。
図1:主要政党の支持率
ロベーン首相を擁する社会民主党の支持率は、新型コロナウイルスの感染拡大の初動対応が有権者に評価され、一時は35%近くまで上昇した(図1)。しかしながら、社会民主党の支持率はこのところ25%程度まで低迷、中道右派の穏健党と極右の民主党の支持率は約20%で肉薄しており、社会民主党にとっては厳しい状況となっている。
この間の社会民主党の支持率の推移は、ドイツの与党・キリスト教民主同盟の動きと近似している。コロナ直前には長期政権へのマンネリズムや民族主義政党への期待から支持率が低迷していたが、コロナ対応の初動対応が評価されて息を吹き返した。しかしコロナ禍が長期化する中で、結局は支持率が息切れしてしまった形だ。