「ニコニコ超会議2019」に出演する藤井聡太。写真/森田直樹/アフロ

(田丸 昇:棋士)

報道が過熱した「勝負めし」

 将棋の棋士が公式戦の対局の休憩時間(昼食・夕食)に、どんな食事をとるのか、という記事や情報がメディアやネットでよく取り上げられている。いわゆる「勝負めし」である。

 新聞の将棋欄の記事などで、それは以前からネタになっていたが、メディアの報道が過熱したのは、あの天才棋士の快進撃がきっかけだった。

 藤井聡太三冠(19=棋聖・王位・叡王)は四段時代の2017年の前半、公式戦の対局でデビューから負けなしで29連勝した新記録を達成した。

 藤井が連勝していた当初は、それほど注目されなかった。しかし、10連勝を超えた頃から、テレビの情報番組やスポーツ紙などが、藤井の活躍を大きく報じるようになった。

 テレビ番組で将棋の専門的な話だけでは、一般の視聴者はついていけない。そこで目を付けたのが、棋士が対局で注文する食事だった。あの藤井が何を食べたかというグルメ情報は、視聴者の関心を大いに呼んだ。

藤井が注文した料理が品切れになることも

 テレビの情報番組は、藤井の注文が予想される店で待機し、店主がその注文を電話で受ける光景や、レポーターが同じ料理を食べて感想を語る映像を流した。

 対局場の将棋会館(東京・大阪)に藤井の昼食が出前で届くと、記者やレポーターは店名と料理を伝えた。それがテレビ放送やネット中継で広まると、当日の午後にはその店に客が押し寄せる事態となり、藤井が注文した料理が品切れになることもあった。

 藤井が対局でよく注文した東京・千駄ヶ谷の将棋会館の近くにある『みろく庵』(2年前に閉店)には、将棋ファンや一般客が数多く訪れ、「勝負めし」の聖地として賑わっていた。

 また、プロ野球・ヤクルトの本拠地の神宮球場が近いため、チームが低迷していた頃は、藤井の勝負強さにあやかろうと、ヤクルトの選手たちが出前をとったという。

 藤井が2017年に公式戦で29連勝していたとき、出前で注文した昼食を調べてみた。その「勝負めし」を一部紹介する。