世界はこんなにも生命に満ちている

イグノーベル生態学賞 受賞者:レイラ・サタリ、アルバ・ギレン、アンゲラ・ヴィダル-ヴェルド、マヌエル・ポルカー(スペイン、イラン) 受賞理由:さまざまな国の

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 スペイン、シンガポール、トルコなど5カ国からチューインガムのかすを採集して、16S rRNA菌叢解析という手法で細菌を分析した研究です。当然のことながら多くの細菌(シンガポールの試料からは427種!)が見つかりましたが、普通は口腔内にいる細菌が主でした。

 これは、実際に舗道に落ちているかすを一個一個手で集めていますね。試料の数が10個と少ないので、増やすことが今後の課題でしょう。

*2https://doi.org/10.1038/s41598-020-73913-4

全米がイソプレン出した

イグノーベル化学賞
受賞者:ジェルグ・ウィッカー、ニコラス・クラウテア、ベティナ・デアストロフ、クリストフ・ステナー、エフストラシオス・ボルツォキディス、アキム・アトバウアー、ヨヘン・ヴルフ、トマス・クリュプフェル、ステファン・クラメア、ジョナサン・ウィリアムス(ドイツ、UK、ニュージーランド、ギリシャ、キプロス、オーストリア)
受賞理由:映画館の空気を分析し、観客の放出する臭気を測定することによって、映画の暴力・セックス・反社会的行為・薬物・悪態のレベルを評価*3

 映画の年齢制限やレーティングは、はっきりした判定基準がないことが多く、鑑賞中に「こんなの子供に観せていいのか?」と戦慄したり、「どうしてこの程度で制限するの? レーティング決めたの異端審問官?」といった疑問を抱くことはしばしばあります。

 レーティングの是非はおいておくとして、もしも科学的で客観的な判断材料が得られれば、作品を制作する側もレーティングする側も楽になるでしょう。

 この研究は、映画館で観客の呼気や発汗によって放出される60種の化学物質を測定し、放出量と、映画のレーティングの間に相関がみられるかどうかを調べたものです。映画として、『悪の法則』、『ホビット 竜に奪われた王国』、『パラノーマル・アクティビティ5』など、十数本が用いられました。

 すると、ほとんどの物質は映画のレーティングと相関しなかったのですが、イソプレンという物質だけは、レーティングの高い映画では観客から多く放出されたのです。ただし有意度はあまり高くないです。

 将来、観客のイソプレン放出量が映画の判断材料として用いられるかもしれません。

*3https://doi.org/10.1371/journal.pone.0203044