開催まで2週間余りとなった「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下、東京大会)の成功(来日外国人の安全確保を含む)には国の威信がかかっている。
現在のコロナ禍にあって、安心・安全な大会運営と国内の感染拡大防止が焦眉の急であることは間違いない。
しかし、東京大会のサイバー空間の安全確保もまた、疎かにできない。
東京大会が国内外のハッカーからの攻撃を受けることは避けられないであろう。過去の大会のインシデントの事例を見ると、年々、サイバー攻撃のレベルは高度化している。
日本がコロナ対応で大変だから、攻撃をやめておこうという義侠心に富んだハッカーはいない。
それどころか、是が非でも大会を成功させたい日本政府はランサムウエアによる金銭の要求に応じやすい標的とみなし、攻撃を仕掛ける無慈悲なハッカーばかりである。
今、日本全体がコロナ対応に追われ、日本の威信を失墜させようとするハッカーや金銭目的のハッカーなどが東京大会を虎視眈々と狙っていることを忘れているように見える。
今一度、東京大会のサイバー空間の安全確保は、東京大会の成功に直結していることを思い起こさなければならない。
最近、筆者には気になる2つの事象があった。
一つは、2020年10月19日、英外務省は、ロシアのハッカーらが、昨年開催予定だった東京オリンピック・パランピックの妨害を狙っていたと発表した。
同省によると、ロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)が、東京オリンピック・パラリンピックの関係者や関連組織に対して「サイバー偵察」(詳細は後述する)を実行した。
こうしたサイバー攻撃は、大会が新型コロナウイルスの影響で2021年に延期されることが決まる前に仕掛けられたという。
同省は、サイバー攻撃の性質や範囲など、具体的な内容は明らかにしなかった(出典:BBC)。
この事案については、英国政府から日本政府へ情報提供があったとの報道もある。
もう一つは、 2021年6月25日、日本オリンピック委員会(JOC)が、昨年4月に明らかにしたサイバー攻撃だ。