新型コロナウイルスはこれまでのコロナウイルスと大きく異なる性質があることが分かってきた

 最近、新型コロナウイルスが中国の武漢ウイルス研究所から流出したという説が注目されている。

 パンデミックが始まった当初、新型コロナ関連のニュースを追っていた多くの人たちは武漢の海鮮市場で野生動物からヒトに感染が広がったと信じていた。

 他方、武漢ウイルス研究所から漏洩した生物兵器であるという陰謀説も流布されたが、大部分の人々はこの陰謀説をまともに取り合わなかった。

 筆者も、旧稿『新型コロナ巡る2つの陰謀説を徹底検証する』(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59884)(2020.3.27)で、「筆者は、この陰謀説は、現時点では、事実に基づかない憶測である可能性が高いと推測する。発生源を特定するには科学的調査を待たなければならない」と述べた。

 2021年2月9日、中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスの起源を調査していた世界保健機関(WHO)と中国の合同調査団は会見を開き、同ウイルスを人へと感染させた宿主動物はいまだ特定できていないと報告した。

 また同ウイルスが武漢市内の研究所から流出したという説については、「その可能性は極めて低い」との見方を示した。

 我々は、WHOの発生源を特定する科学的調査に期待したが、予想通り中国の協力が得られず、新型コロナウイルスが動物から人に感染したのか、あるいは武漢ウイルス研究所から流出したのかはいまだ決着がついていない。

 ところが、最近、研究所流出説がにわかに注目を浴び始めた。

 新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからである。

 彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19)と名乗る。

 そして、DRASTICの功績を認めたハーバードやイェール、MIT(マサチューセッツ工科大学)、スタンフォード大学など米国を代表する大学・研究所に所属する17人の科学者が5月17日、サイエンス誌に公開書簡を発表し、武漢ウイルス研究所の徹底調査を呼びかけた。

 そして、この公開書簡の発表を受けて5月26日、ジョー・バイデン大統領は、新型ウイルスの発生源に関し追加調査を指示した。

 バイデン大統領は、「2倍の努力をして情報を収集、分析し、決定的な結論に近づき」、90日以内に報告するよう関係機関に求めた。

 また、5月28日、WHOも再調査の検討を始める方針を明らかにした。

 さて、AFP通信が各国当局の発表に基づき日本時間6月9日午後7時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は375万28人に達している。

 科学者は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の発生源を特定することは、将来のコロナウイルス感染症の発生を防ぐために重要だと述べている。筆者も全く同感である。

 本稿は、新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所からの流出説を検証しようとするものである。

 以下、初めに、DRASTICの活動状況と功績について述べ、次に、米国の政府および情報機関の動向について述べ、次に、ウイルスの起源に関する4つの仮説とその可能性について述べ、最後に、可能性のある2つの仮説の検証について述べる。