中国、武漢のウイルス研究所では、2013年という早い時期に、人間に感染可能なコロナウイルスが、2種類も発見、分離、培養され、その全遺伝子配列、つまりゲノムが決定されていたことを前回ご紹介しました。
(「中国の武漢研究所で8年前に分離済み、ヒト感染コロナウイルス」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65617)
実に良いタイミングで、中国雲南省のコウモリから、さらに4種類もヒト感染可能なコロナウイルスが発見されたとの報道(邦文:https://news.yahoo.co.jp/articles/a1ec1ec663711d544a8a7a75244eb4fc86b29951、New Zealand Heraldの6月12日付元記事:https://www.nzherald.co.nz/world/covid-19-coronavirus-chinese-researchers-find-24-new-coronaviruses-in-bats/YMD42TGGOXLML4GJ3JKDWXS5IU/)がありました。
本連載は日本語ですが、外電の焼き直しではなく、科学的なファクトに基づいて書き下ろしているので、むしろ海外に先駆けて情報をお届け出来る面があれば、何よりと思います。
今回も、基礎的、理学的な観点から喫緊の問題の源流を探訪してみましょう。
では、なぜ一部のウイルスは人間に感染し、それ以外はヒトにはうつらないのでしょう?
今回は、改めて新型コロナウイルスという病原体(SARS-Cov-2)の正体、その本質的な感染メカニズムの恐ろしさと、ウイルス側の戦略、感染を防ぐための人間サイドの基本的な注意点をまとめてみましょう。
「エースをねらえ!」新型コロナが狙う鍵穴
いったい、新型コロナウイルスはどのようにして私たちの体を冒していくのでしょうか?
「飛沫感染」あるいは「空気感染もあるのでは」などと言われますが、ただ単にウイルスが私たちの体の中、鼻や喉の粘膜、あるいは肺胞の表面に付着したからといって、それだけで直ちに病気になるわけではありません。
ウイルスが私たちの体の中に侵入して初めて病気が進行し始めます。
そのカギとなるのが「エース」です。コロナは「エースをねらえ!」と、私たちの体の表面で活動を開始するのです。
これは冗談でも何でもなく、ACE2(Angiotensin-convertingenzyme2、アンジオテンシン変換酵素2)と呼ばれるたんぱく質、私たちの細胞の表面に存在する「鍵穴」を狙って、空き巣泥棒のように近づいてくる。
そして、その「エース2」という鍵穴に差し込んで、細胞のドアを開ける「ニセの合鍵」こそが、コロナの全身に生えている、あのツノツノ、「スパイクタンパク質」と呼ばれる突起にほかなりません。
私たちの細胞にある「鍵穴」はレセプターと呼ばれ、「エース2」はそうした鍵穴の一つとして広く知られますが、唯一ではなく、ほかにも空き巣=コロナウイルスが侵入口にしているレセプターは存在していることに触れたうえで、先に進みたいと思います。
現在、全世界で接種されているあらゆる「コロナウイルスワクチン」は、タイプこそ様々ですが、人間の体内には本来絶対に存在しないスパイクタンパク質(コロナという泥棒)が人間の体内に侵入しようとして準備している「ニセの合鍵」を、私たちの免疫系に認識させて、合鍵を無効にする抗体治療を目的とするものです。