日本より年間労働時間が日本より300時間短く、時間当たり生産性が1.4倍高いドイツ。ドイツ人の日々の働き方は日本人とどう違うのか? 隅田貫氏(メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー)は1985年からドイツで暮らし、2005年にドイツの老舗プライベートバンク、メッツラー社フランクフルト本社に日本人として初めて入社した。隅田氏が目の当たりにした、生産性の高いドイツの働き方のリアルを著書『ドイツではそんなに働かない』(角川新書)から一部抜粋・再編集してお届けする。(JBpress)
変えることに躊躇しない
私がメッツラー社に入社して程なく、当主である11代目のフリードリッヒ・フォン・メッツラー氏に初めて挨拶に行きました。
ドイツで330年以上(当時)も続くプライベートバンクの創業者一族です。きっと広い部屋に高級そうな絨毯が敷き詰められ、天井からはシャンデリアが下がり、大きなソファセットなどのインテリアも高価なものばかりなのだろう・・・そう思っていた私は、部屋に一歩足を踏み入れた途端、拍子抜けしました。
普通の会社の小さな会議室並みの広さの部屋で、秘書の机もそこにありました。絨毯は敷かれておらず、デスクや本棚のほかは客を迎えるソファセットがあるだけ。どれもシンプルで使いこんであり、とても老舗企業のトップが使っているとは思えない簡素な執務室だったのです。余計なところにはお金を使わないドイツ人らしいな、と感じました。
入社した挨拶をすると、彼は次のように言いました。