おわりに
米国は中国のウイグル人に対する所業を「ジェノサイド」と認定し、英国も同認定を検討している。NATO(北大西洋条約機構)も中国を「脅威」と認識し、「自由で開かれたインド太平洋」とするために空母や艦艇を派遣する計画である。
国際社会から見れば、いまやインド太平洋が焦点になりつつあり、日本からみれば台湾や尖閣諸島を含む沖縄周辺が当面の課題である。
しかし、中国が2010年に施行した国防動員法によって、日本にいる中国人が動員されることを忘れてはならない。この法律によって、日本にいる中国人が立ち上がる義務を負わされているからである。
日本には技能実習生や留学生などを含む若者約50万人がいる。一部は来日前に「礼儀作法」という名目で人民解放軍の指導を受けているとされる。
また、北海道から沖縄までの日本の至る所の土地や山林が中国系資本で買い漁られているが、立ち入り禁止等も多く、行政当局による実態把握が行われていない。調査はもちろん、無人機等による監視等も必要ではないだろうか。
2008年の北京オリンピック時の長野聖火リレーでは暴力事件を起こし、2011年の東日本大震災時には新潟県で貸し出した体育館に日本人を立ち入れなかったことなどから、有事に彼らがトロイの木馬となって全国で立ち上がり、日本が南西地方に集中することを阻害しないとも限らない。
しかし、国民のほとんどはそこまで考えることはない。
作家の五木寛之氏は、かつては「マサカ」にあまり驚かなかったが、「近ごろ、専門家や情報通と呼ばれる人たちの予想が外れることが多(く)」、「マサカ、マサカの現実にぶつかる」という。
そして、こうした状況を冗談に「心配停止状態」と呼ぶことがあるという(「『マサカ』の時代」、『新潮45』2018.1所収)。
心配停止は「心肺停止」と通じるものであり、国民の多くが尖閣を「我がこと」として考えない状況は、「国家」の死に繋がりかねない。