(北村 淳:軍事社会学者)
アメリカでバイデン政権が発足して以来、中国が南シナ海での軍事的優勢確保のための行動だけでなく、東シナ海そして台湾への軍事的圧力を一段と強化している。
本コラムでも何度か触れた中国海警法の施行に加えて、中国海警局巡視船が尖閣周辺海域へ姿を見せるのはすでに常態化している。そして、尖閣周辺よりもさらに軍事色が露骨な動きをとっている。それは台湾の防空識別圏(ADIZ)への中国軍機の侵入事案である。
日常となったADIZ侵入
尖閣周辺に海警局巡視船がほぼ毎日のように姿を現しているのと同じく、中国軍機がほぼ毎日のように台湾のADIZへ侵入を繰り返している。
その狙いは、1つには台湾空軍を毎日のように緊急発進させて疲弊させるという、東シナ海上空で航空自衛隊に対しても実施している、いわゆる出血作戦による対台湾威嚇の一環である。
それとともに、台湾が実効支配を続けている東沙諸島と台湾本島の間の軍事的優勢は完全に中国軍が握っていることを繰り返してアピールして、台湾側の士気を萎えさせようという目論見も含まれている。