さらには、太陽光発電、風力発電の用地(推定20万ヘクタール)の中にも外資分が相当数混じっているが、こちらも詳細は不明だ。リゾート地や雑種地、原野の買収数値に至っては担当省庁が見当たらず、宙に浮いている。
こう見てくると、外資の買収面積は、公表されている数値より一桁から二桁多いと考えるのが妥当だろう。
現在、北海道全域、長野県、大阪市、対馬など、国土買収の動きは水面下のものも含めると、依然止むことなく続いている。沿岸部の半島や岬、海峡を望む一帯もリゾートや再生エネルギー用の名目で買い進められ、街中のアパート、マンションも一棟買いがフツーに出てきている。インバウンド待望は観光業にとどまらず、全産業に及んでおり、買収の矛先は市街地、農林地、リゾート地のみならず、工業団地、卸売市場等へ進んでいくと予測できる。
影響は列島全土に広がっているが、こういった買収の大半は新法の網には引っかからない。
「外資の国土買収は、安全保障上の問題と税ガバナンスの喪失、公衆の秩序の維持の問題を惹起する。だから、法制度を整えた後で許容すべきだ」
筆者の主張はこうだが、買収のスピードに政策が追いついていない。
新法の効果はどれくらいか?
そこで今回、ようやく〈外資の土地買収調査法案〉が検討されることになったわけだが、実は「これで一歩前進」となるかどうかはまだ不明だ。
「実質的に何の縛りにもなっていない」
新法の実効性を危ぶみ、そう批評する識者もいる。理由は二つ。新法による〈規制区域〉と〈規制内容〉だ。
報道等によると、新法が規制する土地「注視区域」は、防衛関係施設や重要インフラ施設の周辺、国境離島等である。自衛隊拠点、米軍基地、国境離島、原子力発電所、国際海底ケーブルの陸揚げ局、軍民両用空港の周辺だという。こうした区域内の不動産については、所有と利用状況の調査が行われ、特に重要性が高い施設の周辺や離島は「特別注視区域」となる。この注視区域の面的な広がりは、各施設から概ね1キロメートル以内となる模様だ。米国の対米外国投資委員会(CFIUS)は、軍・政府施設の場合、周囲最大100マイル(160キロメートル)をとっていて、日本の新法より二桁多い。