マイク・ポンペオ国務長官も2020年10月、ハバナ症候群の“謎解き”に「アメリカ政府が持つ重要なリソース」が投入されていたことを認めている。

 指向性エネルギー兵器(DEW、directed-energy weaponの略称)とは、レーザー光、メーザー波、マイクロ波、素粒子エネルギー、電子ビーム、音響など、多種にわたるエネルギーを使用して、目標物や人間に対して直接照射し、破壊したり機能を停止させたりするというSF小説ばりの兵器だ。現在も研究開発の段階にあるとはいうものの、技術の進歩と投資の増加により、2020年~2027年までに、世界の指向性エネルギー兵器市場は大幅な拡大が見込まれている。軍事防衛の面から「夢」の兵器として期待されているというが、私たち人類にとっては「悪夢」が到来する日も、そう遠い将来ではないということだ。

ネットで政府への不満を口にしただけなのに・・・

 ところで、半年ほど前に、中国のSNSに短期間だけ、次のような投稿があった。

 投稿者は男性で、一年ほど前に友人とネットで中国政府に対する不満を口にしたところ、翌日、警官が自宅にやってきて警告を受け、ネットが使えなくなった。それ以来、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなどを感じるようになり、何も手につかない状態が続いている。自分と同じような症状を訴える人は、現在1万人以上いるとみられ、中には自殺したり、精神に異常をきたした人もいる。だが、自分はひたすら耐えて、頑張っているという内容だった。

 このSNSはすでに削除されて、真偽のほどはわからない。だが、もし事実だとしたら、当局が国内の不満分子を標的にして、秘かにマイクロ波兵器の出力と条件を実証実験している可能性も否定できないだろう。

 今年の2021年7月は、中国共産党の誕生100周年にあたる。

 中国政府は南シナ海で強硬な領有権を主張しているが、陸続きのインドに対しても、近代兵器を誇示することで、これまで未処理だった国境線の画定を急ぎ、国家の権威を高める狙いがありそうだ。マイクロ波兵器が、すでに実用化され攻撃用に使われているとしたら、深刻な事態だ。世界は一刻も早く対応策を講じなければならない。