米国の反応も気になるところだ。ロイター電(2020年12月3日付)によれば、米国のラトクリフ国家情報長官はロイターに寄稿して、「中国政府が米国や地球全体を経済、軍事、技術的に支配しようとしているのは明白だ」と指摘し、中国が軍の近代化を図るために米国の防衛技術を盗んでいると主張。「世界の民主主義と自由にとって、中国は第二次世界大戦後最大の脅威だ」と危機感を露わにした。

 どうやら米国は、すでに中国がマイクロ波の兵器開発に成功した事実を掴んでいるようなのだ。

アメリカの大使館員が次々と原因不明の頭痛、めまい、吐き気に

 マイクロ波を利用した対人兵器システムは、もともと米国企業が暴動鎮圧用に「非致死性兵器」として開発したもので、米軍はアフガンとの対立で短期間戦地へ持ち込んだが、使用しなかったともいわれている。

 マイクロ波は、電子レンジや携帯電話に利用されることで知られているが、専門家によれば、95ギガヘルツのマイクロ波を照射されると、一瞬で皮膚表層が熱くなり、やけどこそしないものの、皮膚細胞の水分が沸騰して苦痛を与えるという。また、1~6ギガヘルツのマイクロ波に長時間さらされると、人間の体内に到達して脳や内臓にダメージを与え、頭痛、吐き気、記憶障害、激しい倦怠感などを引き起こすという。微弱なため、当初は自覚症状がなく、外傷も残さないのが特徴だ。兵器化に当たっては、その出力と条件を研究することが課題だともされる。

 マイクロ波を利用した疑惑は、過去にも二度例がある。

 2016年、キューバに駐在していたアメリカの外交官とその家族、CIA職員ら44人が、頭痛、めまい、吐き気、目のかすみ、耳鳴りなどの症状が突然現れて、帰国したことがある。この時は、ロシアのマイクロ波による攻撃を受けた疑惑がもたれ、脳損傷をもたらす「ハバナ症候群」と呼ばれた。

 2017年にも、中国の広東省にある米国領事館で、米国人外交官とその家族ら15人に同様の症状が現れて、即刻帰国した。当時、私はこの不可解な出来事が強く印象に残ったが、その後の報道は一切なく、遠い記憶となっていた。

 ところが、昨年末、米国のNBCテレビの報道(2020年12月15日付)で、米国科学アカデミーが、長期間「ハバナ症候群」の原因を究明してきた末に、12月5日に研究結果を発表し、「指向性」(しこうせい)エネルギー兵器であるマイクロ波を使用した可能性が高いと結論付けた。また、ロシアではこの種の「重要な研究」が行われているとも指摘した。