(写真はイメージです)

 連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第39回。新規感染者数の減少スピードが緩やかになってきており、医療の逼迫はなお予断を許さない──医療現場の現状と、だからこそ今やらなければならないことを讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が提言する。

 第3波は収束したのでしょうか? 緊急事態宣言発出から1か月半、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数はかなり減りました。埼玉県でも、新規感染者数の7日移動平均はピーク時(1月16日)の457人から150人(2月19日)へと3分の1になりました。これは皆さんのご協力によるものです。一医療従事者として心より感謝申し上げます。

埼玉県ホームページより
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 一方で、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、2月18日の会合で以下のような分析結果をとりまとめました。

「夜間の人流の再上昇がみられる地域もある。感染減少のスピードが鈍化している可能性もあり、留意が必要」

 医療現場で実際に重症患者の治療にあたっている私も、ここで油断が生じ、じゅうぶんに新規感染者数が下がりきらないまま緊急事態宣言が解除されることを心配しています。というのも、現在でも医療の逼迫が解消したとは言えないからです。

「バケツ」はまだ水がいっぱい

 ひとことで言えば、医療のキャパシティというバケツは、まだ水がいっぱいで、ちょっとしたことですぐにあふれかねない状態です

 1月初旬から半ばのピーク時は、バケツから水があふれ出てしまいました(第33回参照)。本来、入院すべき新型コロナ患者(高齢者、基礎疾患のある方など症状の悪化が予想される患者)が自宅療養・ホテル療養を余儀なくされ、新型コロナ感染症以外の病気の患者さんの入院・転院も難しい状況でした。

 現在は”あふれ”はかなり解消されましたが、“あふれない“、つまり、入院すべき人が難なく入院でき、通常であれば気軽に外来受診できる状態には戻っていません。新型コロナ感染症は1回入院すると退院までが長いため、新規感染者の減少と同じスピードではベッドは空かないのです。少しずつ空いたベッドに新規感染者が入院してくるので、今も満床に近い状態です。結果、その分のベッドを一般診療に回すことができず、地域としての救急患者の受け入れ状況もなかなか改善しません。