中国の積極的「ワクチン外交」

 実はジョコ大統領がワクチン接種を受ける前日の1月12日から翌13日にかけ、中国の王毅外相がインドネシアを訪問していた。ワクチン接種を終えたジョコ大統領を始め、ルフト・パンジャイタン調整相(海事・投資担当)、レトノ・マルスディ外相らとも会談した。

 会談で王毅外相は中国によるワクチン提供に触れて、「ワクチン提供を通じてインドネシアとの2国間の友好関係は新たな段階に入った」とワクチンによって両国関係がより密接になったとアピールした。

 この王毅外相の訪問は、アフリカ諸国歴訪を経て、ミャンマー、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアを相次ぎ訪問した外遊の一環。インドネシアの後に訪れたフィリピンでは、追加として50万回分のワクチン提供を明らかにするなど、世界各国を股にかけ「ワクチン外交」を存分に展開したのだった。

1月16日、フィリピンを訪問した中国の王毅外相。フィリピンのテオドロ・ロクシン外相と肘タッチして親密さをアピールした(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 この時期の王毅外相のアフリカ、東南アジア歴訪は、1月20日に就任式を迎える米バイデン新政権を念頭にした牽制との見方も出ている。

 トランプ米大統領は就任直後を除いて東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議への欠席を続けるなど「ASEAN軽視」とみられる姿勢を取ってきた。そこを中国はすかさず突いてきた。ASEAN各国へ急接近し、経済援助、インフラ支援、そしてコロナ禍に伴う「マスク外交」と、それに続く「ワクチン外交」を通じ、関係性を強化してきたのだ。その結果、ASEAN各国は軒並み中国製ワクチンの供給を受け入れることとなった。