「何か心当たりがありませんか? とうかがってみると、体重が減り続けてめまいやふらつきが出て、なんとか食べなきゃと卵入りの蒸しパンを毎日召し上がっていらっしゃいました。卵が入っているからタンパク質も取れるし、やわらかくて食べやすいので選んだとのことでしたが、LDLコレステロールの上昇となると卵が影響しているように思いましたので、何か代わりのものがないかと考えました。普段からコンビニで食事を購入される方でしたので、コンビニならレトルトや電子レンジでチンするタイプのお粥も売っていますから、蒸しパンの代わりにお粥を提案しました。また、お粥に合うおかずやエネルギー量が低下しないような献立のご提案もしました。エネルギー量や栄養価の違いなどを説明したところ、驚かれていました」(大塚さん)

 自己判断で習慣的に食べているものを変えると、年齢や体質によっては過剰になったり不足になる栄養素があり、思わぬ結果をもたらすことがある。管理栄養士による栄養相談では、その人の体の状態や生活スタイルに合わせた提案と共に「実行できたか」「なぜできなかったか」というフォローアップもしてもらえる。体調の不安や病気の備えに、ぜひ栄養の専門家に相談してみてはどうだろうか。大塚さんが勤める薬樹薬局では、新型コロナウイルスの感染対策をとりながら、栄養相談を受け付けている。

仏教の教えにもお粥

 最後に、大塚さんが古くから日本の仏教でお粥の効能が伝えられてきたことを教えてくれた。禅宗の1つである曹洞宗の開祖・道元が1246年(寬元4)頃に撰述した『赴粥飯法』(ふしゅくはんぽう・僧堂における食事作法を細かく定めた規則を文書化したもの)の中に、「粥有十利(しゅうゆうじり)」というお粥の10の効能を記した文章がある。

1.色(しき) 血色を良くする
2.力(りき) 力がみなぎる
3.寿(じゅ) 寿命を延ばす
4.楽(らく) 苦痛が無い
5.詞清弁(ししょうべん) ことばがはっきりする
6.宿食(しゅくしょく) 胸のつかえが治る
7.風除 風邪を除く。風邪が治る
8.飢消 飢えを消す
9.渇消 渇をいやす
10.大小便調敵 便通が良くなる

 770年以上前から体調を整えると伝えられてきたお粥。病気と闘う時も、日常生活でも、上手に取り入れたい伝統食なのだ。