一方、SMICは、2017年にサムスンから共同CEO(Co-CEO)としてスカウトしたリァン・モン・ソン(Liang Mong Song、以下Liang)氏が強力に微細化を推進しており、2019年に14nmのR&Dに成功し、今年2020年第1四半期には、14nmが出荷額に占める割合が1.3%になった(図2)。その後、Liang 氏率いるSMICは、12nmおよびEUVを使わない7nm(図1の“N+2”)のR&Dを行っていると思われるが、いまだ量産には至っていない。

図2 SMICの技術ノードごとの出荷額の割合(~2020年Q1)
出所:SMICの決算報告書を基に筆者作成
拡大画像表示

 少なくとも、SMICは2020年第3四半期までは、14nm以降を出荷できていない(図3)。しかも、SMICは、図2に示すように2020年第1四半期までは28nmと14nmを区別して出荷額の割合を公表していたが、今年の第2四半期以降は28nmと14nmを合計した割合を発表しているため、14nmの割合がどのくらい増えたのかすらわからない。

図3 SMICの技術ノードごとの出荷額の割合(~2020年Q3)
出所:SMICの決算報告書を基に筆者作成
拡大画像表示

共同CEOのLiang氏とは

 ここで、ちょっと脇道にそれるが、SMICの共同CEOのLiang氏がどのような人物かを示したい。

 Liang氏は1992年にTSMCに入社し、R&D部門のシニアディレクターを務め、その尖った性格から、TSMC内やサプライヤーからは恐れられていた。

 そのLiang氏は2011年に、28nmプロセスを引っ提げ、部下十数人を連れてサムスンのファンドリー部門に移籍し(スカウトされたのかもしれない)、AppleのiPhone用プロセッサビジネスをTSMCからもぎ取ることに成功した。

 これに対してTSMCは、Liang氏とサムスンを技術盗用で訴えた(EE Times Japan、2015年2月15日)。この裁判はTSMCが勝訴したが(アジア経済ニュース、2015年8月26日)、Liang氏は表舞台には出てこなくなったものの、サムスンのファンドリーで辣腕をふるい続けたと推察される。

 このLiang氏は、今度は2017年に、SMICの共同CEOとしてスカウトされ、14nmの量産立ち上げ、および、10nm、12nm、7nmのR&Dを推進し、5nmのR&Dに向けてEUV導入を計画するなど、強力にSMICの微細化を推し進めてきた。ただし、SMICへのEUVの導入は、米政府がオランダ政府に圧力を掛けたため、いまだ実現していない。

 ところが、最近経営破綻した中国のファンドリーのHSMCのCEOだった蔣尚義(シャンイー・チャン、Shang-Yi Chiang)氏がSMICの副董事長(COO)に招聘されることを知ったLiang氏は、「非常に驚くとともに理解できなかった。私に対する尊重と信任がすでになくなったと感じた」と辞意を表明した(日経新聞、2020年12月16日)。

 SMICの新COOになるChiang氏も、Liang氏と同じく、元TSMCのR&D部門の責任者を務めた人物である。筆者の憶測だが、Liang氏はChiang氏をライバル関係にあったため、今回の突然の辞意表明に至ったのかもしれない。いずれにせよ、SMICは経営陣を刷新することになる(EE Times Japan、2020年12月18日)。

 ここで、脱線した話をSMICのELに戻す。

10nm以下用の製造装置があるのか?

 図4に、半導体工場が必要とする製造装置の企業別シェアを示す。10種類以上の製造装置があるが、この中で「10nm以下用の製造装置」と断言できるのは、ASML社製の最先端露光装置EUV、および、EUV用マスク検査装置だけである。その他の装置には、特に「10nm以下用」は、無い。

図4 半導体製造装置の企業別シェア(2019年)
黄色:欧州、緑:米国、青:日本
出所:野村証券のデータを基に筆者作成
拡大画像表示