この中では、現在のところ、ASML傘下の米サイマー(Cymer)が光源を製造している。米政府がオランダ政府に圧力をかけた結果、ASMLはSMICへEUVの出荷ができなくなった。その原因の1つが、米国籍の企業であるサイマーがEUVの極めて重要なモジュールである光源をつくっていることにある。今後もASMLは、サイマーが製造した光源が使われているEUVをSMICに輸出することはできないだろう。

 ところが、EUV光源をつくれる企業は、もう1社ある。それは、日本のギガフォトンである。残念ながら現在、TSMCやサムスンが7~5nmの量産に適用しているEUVには、ギガフォトンではなくサイマー製の光源が搭載されている。

 しかし、ASMLのEUV光源をサイマーからギガフォトンに代えることは、不可能ではない。というのは、サイマーがEUV光源に使用している、レーザーを2段階でスズの液滴に照射する“プリパルス”という技術は、もともとギガフォトンが開発したものだからだ。

 もし、EUV露光装置にギガフォトンの光源を搭載すれば、米商務省のELには抵触しないと思われるため、ASMLはSMICにEUVを出荷できるようになるかもしれない。

米商務省のELは“ザル規制”

 米商務省が12月18日にSMICをELに掲載したが、この輸出規制では、AMAT、ラム、KLAなどの米国製の製造装置の輸出は止められない。したがって、SMICがSADPやSAQPを駆使して7nmの半導体を量産することは可能である。さらに、光源を米サイマーから日本のギガフォトンに代えれば、ASMLはEUVをSMICに輸出することができるようになるだろう。

 以上から、米商務省のSMICのELは“ザル規制”と言わざるを得ない。米国防総省が12月3日に、中国人民解放軍と関係が深い中国企業としてSMICを指定して、米企業との取引を禁ずるとしたが、肝心要の米商務省のELは全く機能しないことになる。

 せっかく米国防総省がSMICをブラックリストに入れて米企業との取引を禁じると発表しても、米商務省の“ザル規制”のELでは何も止められない。なぜ、米商務省は、SMICに対するELに、このような欠陥のある注釈をつけたのか?

 もしかしたら、半導体技術のことを全く分かっていないド素人がELを決めたのだろうか? 謎は深まるばかりであり、筆者は、米政府がSMICをどうしたいのかが理解できずにいる。