筆者が「摩訶不思議な注釈」と言ったのは、上記の引用の太字にした箇所である。本稿では、この「摩訶不思議な注釈」では、SMICへの米国製の製造装置の輸出を停止できないことを論じる。

 また、10nm以下用の製造装置としては、唯一、オランダのASMLが出荷している最先端露光装置EUVが該当するが、これも上記のELを迂回する手段があることを説明する。

 要するに、今回の米商務省のSMICに対するELは“ザル規制”であるため、何らSMICへの輸出規制にはならないのである。したがって、なぜ、米商務省が、このような“ザル規制”ともいうべきELを制定したのか、筆者は理解に苦しんでいる。

SMICのロジック半導体の微細化レベル

 まず、SMICのロジック半導体の微細化のレベルを確認しておこう。図1は、調査会社TrendForceが2020年9月に発表したTSMC、サムスン、SMICの微細化のロードマップを示す。

図1 TrendForceによるTSMC、サムスン(Samsung)、SMICのロードマップ
出所:TrendForce、2020年9月
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【本記事は多数の図版を掲載しています。配信先で図版が表示されていない場合は、JBpressのサイト(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63474)でご覧ください。】

 微細化の最先端を快走しているTSMCでは、EUVを使わない7nmが2018年に立ち上がり、2019年にはオランダのASMLが20年以上かけて開発した最先端露光装置EUVを孔パタンに用いた7nm+の量産が実現した。今年2020年には、コロナの感染拡大の影響などを全く受けずに、配線にもEUVを適用する5nmが立ち上がった。来年2021年には、3nmのリスク生産が開始され、2022年には本格量産に移行する見込みだ。

 半導体メモリのチャンピオンであるサムスン電子は、2030年までにファンドリー分野でTSMCを追い越すという目標“Vision 2030”を掲げ、2018年に8nm、2019年にEUVを使った7nmを立ち上げ、今年2020年は5nmを立ち上げたことになっている。ただし、TSMCに比べると、EUVを使いこなしているとは言い難く、7nmや5nmの量産規模もTSMCに比べると比較にならない程少ない規模である。