日本以上に「五輪どころではない」欧州の感染状況

 第四は、世界の反応である。IOCはヨーロッパ貴族のサークルだと考えてよい。私は若い頃にヨーロッパの国々で勉強し、欧州の言葉もいくつか喋れるのでIOCの仲間とは親しく付き合ったが、まさに欧州のサロンに入った感じである。IOCの第一公用語はフランス語であり、近代オリンピックの父、クーベルタンはフランス人である。

 そのフランスは、先述したように、新型コロナウイルスの感染再拡大に悩み、東京五輪どころではないというのが本音である。オリンピックのことなど話題にするのも慮れる状態である。他のヨーロッパ諸国も同様であろう。

 アメリカは、大統領選挙後も政権移行が円滑に行われていないが、バイデン政権が東京五輪に対してどのような対応をとるのかは未定である。高温多湿の真夏の東京で五輪を行うのは、アメリカのテレビ局NBCの放映権との絡みである。

 つまり、極論すれば、視聴率がとれるプロバスケット選手が夏休みの「穴埋め」としての五輪なのである。高額の年俸を稼ぐそのような選手が、感染リスクを冒してまで東京五輪に参加するかどうかも疑わしい。

 やはり、すべては新型コロナウイルスの感染状況次第なのである。WHOのテドロス事務局長は、ワクチンが開発されたからといってパンデミックが終わるわけではないと警告している。

コロナ禍で経済的苦境にある国民が五輪で盛り上がれるのか

 第五は、日本国民の反応である。新型コロナウイルスの感染が再拡大している状況で、飲食店なども営業時間の短縮などの規制をまた科されることになりそうだ。経済的に困窮する国民が増えており、バッハ会長の来日が気運醸成には繋がっていないのが現実である。それこそ東京五輪どころではないというのが、現段階での国民の気持ちではなかろうか。

 10月の自殺者は2153人で、昨年10月より614人、約4割増である。男性は21.3%増、女性は82.6%増と、とくに女性が多い。4カ月連続で増加している。やはり新型コロナウイルス感染拡大が影響しているようである。因みに、コロナ感染による死者のこれまでの総計は1948人、1カ月の自殺者よりも少ない。

 このような事態の下で、五輪開催の雰囲気が盛り上がるはずはない。要するに、開催国の国民の理解と支持がなければ、五輪は成功しないのである。

 先週末に行われたANNの世論調査では、東京五輪開催について「さらに延期」が28%、「中止」が31%で、合計で59%である。「来夏開催が良い」は33%しかいない。これが国民の声である。

 五輪開催問題をタブーとせずに、国民全体で議論しなければならない。

<お知らせ>
舛添要一YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』でも最新の時事問題について鋭く解説しています。