オバマ政権で所得格差と労働者の雇用喪失は拡大した(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選まで1週間を切った。前回の大統領選では下馬評を覆してトランプ大統領がヒラリー・クリントン候補を破った。各種世論調査でバイデン候補がリードしているが、そのまま逃げ切るのだろうか。「中国切腹日本介錯論」を唱える岩田太郎氏が斬る。2回目はこちら

既に勝利に酔っているエリート知識層

(岩田太郎:在米ジャーナリスト)

 米大統領選挙の最終投票日である11月3日まであと1週間を切ったが、米メディアやアカデミア、財界や政界のエリート知識層は、すっかり勝利ムードに酔っている。民主党のチャレンジャーであるバイデン候補はトランプ大統領に追い上げられているとはいえ、少なくとも各種世論調査においては、そのリードが揺るぎないように見えるからだ。

 こうした中、財務長官や国務長官など「バイデン次期政権」の重要閣僚候補が取り沙汰されたり、米外交政策がどのように転換するかが論壇で議論になったり、トランプ政権により完全に保守化した司法をどのようにリベラル派の手に取り戻すかなど、エリート知識人は捕らぬ狸の皮算用に余念がない。彼らは、バイデン勝利で祝杯を上げることになるのだろうか。

 ここで、ヒラリー・クリントン民主党大統領候補が得票数ではトランプ共和党大統領候補を上回りながら、激戦州を落としたことで多数の選挙人を失い、結果として敗北した4年前の原点に立ち返ることは重要だろう。今回民主党が勝利するとすれば、同党が真に失敗に学んだのか、大統領、上下院のすべてを制する「ブルーウェーブ」の信仰にどこまで根拠があるのか、確認するよい機会であるからだ。