東アフリカやアラビア半島、パキスタンやインドなど南アジアで猛威を振るうサバクトビバッタ。おびただしい数のバッタが群れをなして移動し、その過程で農作物を食べ尽くしている。インドなど新型コロナウイルスの感染拡大が続く国にとって、今回の蝗害(こうがい)が社会経済に与える影響は甚大だ。
サバクトビバッタは2000mを超える高地を越えることはできないと言われており、バッタの大群が日本に飛来する可能性は低い。もっとも、日本では別の蝗害が発生している。水稲の害虫であるトビイロウンカだ。トビイロウンカの体長は5ミリほど。毎年、梅雨の時期に偏西風に乗って中国や東南アジアから飛来。稲の茎から水分や養分を吸い取り、水田が局所的に枯れる「坪枯れ」を引き起こす。
既に、西日本を中心に都道府県が警報を出しているが、予想以上の発生で収穫に打撃を与えている。
稲の密植も被害拡大の一因
一般的に、トビイロウンカは梅雨前線に乗って中国や東南アジアから飛来する。日本で大発生するかどうかは梅雨の長さや東南アジアを通る台風など気象条件に左右される。今年は梅雨が長かったため、トビイロウンカが例年以上に飛来したとみられる。飛来したトビイロウンカは各地の水田に落下、その後の交配を通して爆発的に繁殖する。
トビイロウンカの被害を防ぐためには、適切なタイミングでの薬剤散布が効果的だが、言うほど簡単ではないと山田氏は言う。
「農薬を撒けばいいのはその通りだが、ここの田んぼを見ても分かるように、稲が密集して植わっているでしょ。トビイロウンカは根元につくから農薬を撒いても下まで届かない。ウンカを防ぐには、早く植えないことと、疎植にすること」