折茂武彦・著「99%が後悔でも。」

 周りは2m近くある選手ばかりで、体も屈強。「これが全国か......」と呆気にとられたことを鮮明に記憶している。

 一緒にプレーした選手から見てもその印象は同じだったようで、佐古賢一(ケンと呼んでいる)はわたしと初めて出会ったときの記憶を「ひょろひょろしていて、まったく目立たなかった」と言っている。

 だが、結果的にはそれが良かった。

 才能も身体能力もなかったぶん、「どうすれば点を取れるか」、ひいては「どうすればこの世界で生きていけるか」を常に考え、実行してきた。

 わたしの代名詞のように言われたスリーポイントシュートも(後述するが、わたし自身はそう思っていない)、大学に入ってから磨いたもので、その裏には「人並み」である自分がこの世界で生き抜いていくために試行錯誤した過去がある。

 そのひとつが「スクリーン」だ。人に動いてもらうことで、「人並み」だった自分が「フリー」でシュートを打つことができる。

 人がいて、初めて成立するもの。バスケットボール選手としてのわたしの人生であり、経営者として決して忘れることのない哲学だ。
(『99%が後悔でも。』折茂武彦・著より再構成)