(舛添 要一:国際政治学者)
11月3日のアメリカ大統領選まで、あと2カ月余りとなった。新型コロナウイルスへの対応に失敗したとして、トランプ大統領の支持率が急落している。感染者数も死者数も世界一という不名誉な状況に、国民が反応した結果である。
アメリカの4~6月のGDPは、年率換算で前期比32.9%減であった。これは、統計開始以来最悪で、2008年のリーマン・ショック(マイナス8%台)を遙かに超えている。個人消費は34.6%減、企業の設備投資は27%減、輸出は64.1%減である。
また、5月には14.7%に跳ね上がった失業率は、6月が13.3%、7月が11.1%であり、8月になってもまだ10.2%で高水準にある。好景気を支持率アップの要因としてきたトランプ政権にとっては、これらの数字は痛手である。
さらに、5月25日にはミネアポリス近郊で黒人男性が逮捕中に白人警察官に窒息死させられる事件が起きた、“Black Lives Matter”という抗議運動が全米に広がった。その後も、6月12日にはアトランタで黒人男性が警察官に射殺され、8月23日にもウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性が警察官に背後から銃撃されている。抗議活動が続き、人種差別に対する批判が強まっていることは、トランプ政権への逆風となっている。トランプ大統領が国民の分断を煽ったからである。
このようなことを背景に、ABCニュースの直近の支持率調査だと、バイデン73%対トランプ27%と、トランプ人気が下降している。ただ、この数字が今後どのように推移していくかは予想できない。
「オバマ路線」否定のためにイラン核合意やパリ協定から離脱
国内から海外に目を転じ、トランプ政権の外交政策を振り返ってみると、高い評価を与えることができるようなものではない。それは、アメリカ第一主義、孤立主義志向の強まりであり、その傾向は新型コロナウイルスの感染拡大でますます顕著になっている。
国際社会との関わりについては、2018年5月にはイランとの核合意(2015年締結)から離脱し、2019年11月には地球温暖化対策を策定したパリ協定(2015年締結)からも去っていった。
貿易面では就任した直後の2017年1月にTPPからの離脱を表明している。グローバリズムとか相互依存関係とか自由貿易主義とは対極の保護貿易主義である。
これらは、オバマ政権の業績をすべて否定するという政治的パフォーマンスの色彩が強いもので、まさにアメリカのエゴを通す孤立主義であった。