9月2日、総裁選への出馬表明会見を行った菅義偉官房長官(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 自民党総裁選は、9月8日告示、14日投開票で決まった。石破茂、岸田文雄、菅義偉の3人が立候補した。

 今回は緊急事態だとして、通常の党員・党友は参加せずに、自民党国会議員394票、47都道府県に割り当てられた各3票(141票)の535票の取り合いで総裁を選出する。多くの都道府県連では、党員による予備選を行い、それぞれが持つ3票を誰に投じるか決定する模様だ。もっとも選挙もまだ始まっていないのに、主要な派閥が雪崩を打つかのように菅支持を表明し、すでにレースは決着したかのような様相を呈している。

 細田派が98人、麻生派が54人、竹下派が54人、二階派が47人、石原派が11人、いずれも菅を支持し、無派閥議員の多数もこれに加わる。その結果、地方票141票を全て失っても、菅が過半数を制すると見られている。石破は自派の19人、岸田は自派の47人の支持を確保しているのみである。

 もう少し票が分散していれば、地方票の動向を見極めて、投票先を変更する議員も出てくるだろうが、ここまで議員票が一人の候補に集中すれば、地方票のいかんに関わらず番狂わせは起こりにくい。選挙は水物なので、まだ何が起こるか分からないが、菅内閣総理大臣の誕生を念頭に置いて、次期首相の課題について論じてみたい。

安倍政権が生んだ「格差拡大」は是正しなければならない課題

 第一は、安倍政権の政策を「継承する」という点である。この点では、菅は、石破や岸田と大きく異なる。石破は「納得と共感」をスローガンに最近の安倍政権を厳しく批判してきたし、岸田もまた「分断から協調へ」というスローガンを掲げ、格差の是正などを訴えている。これは、アメリカ社会を分断させたトランプ政権を批判するバイデン民主党候補の立場に似ている。

 たとえば、アベノミクスが景気を回復させたのは評価できるが、それを継承する場合、「格差の拡大」というマイナス点の是正を試みる必要がある。具体的に、どのような政策によって、その是正が可能なのか、明確な対応策が必要である。

 中央と地方の格差については、菅は「ふるさと納税」というアイデアを出してきた。しかし、それはあくまでも弥縫策であり、抜本的な解決策ではないし、弊害もまた指摘されている。