東京裁判で被告人席に座らされた東条英機・元陸軍大将(1947年12月26日、写真:近現代PL/アフロ)

 NHKの歪んだ報道姿勢については批判が絶えない。

 筆者も今年2月21日、「NHKは公共放送の原点をどこにおいているのか」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59399)で、北方領土返還要求全国大会の報道を「ニュースウオッチ9」で一言も触れなかったことを言挙げした。

 その中で、NHKの偏向報道にも言及し、特に2016年12月12日から4夜連続で放映された「東京裁判」は、事実の偏向や新しい研究成果が全く取り入れられていない点などが高池勝彦弁護士からクレームがついたことなどを紹介した。

 ところがこのシリーズがほとんど内容を変更することなく、今年も2話ずつ2回(8月9日、10日)に変えて放映されたのだ。

 NHKが再度放映したということは、日本人は東京裁判史観を受け入れ、日本に着せられた悪徳国家論や指導者たちの汚名を雪ぐことなく、裁判を主導したマッカーサー個人の思いを色濃く反映した日本国憲法を護持し続けよと国民に語りかけているとしか思えない。

 国際情勢がかつてなく緊張・混迷し、日本の存亡にも関わる今日、東京裁判史観を受け入れることはできない。

レーリング判事の日記が教える真実

 産経新聞パリ支局長の三井美奈氏が、東京裁判にオランダから参加したベルト・レーリング判事の「東京裁判日記」を月刊誌『正論』に連載(令和元年7月号~2年5月号)した。

 レーリンクは「戦争を犯罪として問えるか」で悩み、東京裁判条例の事後法では問えないと結論づける。

 他方でオランダ政府の「(判事団に)同調し、サインせよ」という圧力に屈する。

 そこで、ナポレオンが「犯罪」ではなく「危険の大きさ」から自由を剥奪されセント・ヘレナ島へ追放された先例を参考に、「勝者は平和構築の責務を負うため、敵対行為を除去する強制措置は認められるべき」という独自の解釈をする。

 東京裁判では判事の間でも悶着があった。

 裁判が続行しているときでもGHQ(連合国軍最高司令部)で情報・検閲を担当した参謀第2部のチャールズ・ウィロビー准将は、レーリング判事に「戦争計画が犯罪とみなされるなら、自分の息子は軍人にしない」と語っている。