香港国安法違反で逮捕され自宅から連行される周庭氏(右端)(2020年8月10日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 8月10日、香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で、新たに10人のメディア人や国際的に著名な社会運動家たちが逮捕された。これは、今までの逮捕事例とちょっと質が違う。

 逮捕された10人のうち7人は、香港紙で一番売れている反共(反共産党)・反中の立場を貫く新聞「蘋果日報」(アップル・デイリー)を創始したメディア人で米国政界に太いパイプを持つ黎智英(ジミー・ライ)氏と、その2人の息子。ライ氏の経営するメディアグループ企業「ネクストデジタル」の幹部ら4人である。

 そして、香港の民主派政党「デモシスト」の元メンバーで「民主の女神」として日本メディアにもよく取り上げられている周庭(アグネス・チョウ)氏。さらに、学生団体「学民思潮」の元メンバーでイギリス地上波「ITV」フリーランス記者の李宗澤(ウイルソン・リー)氏、政治グループ「香港故事」メンバーの李宇軒氏も逮捕された。

 香港の「立場新聞」(Stand News)によれば、李宗澤と李宇軒の両氏はこれまで「我要攬炒」(死なばもろとも)のスローガンで香港政府と中国に対する徹底抗戦を呼びかけてきた。昨年(2019年)の区議会では海外専門家選挙観察団を組織して、区議会選挙の状況を観察、報じるなどの活動をしたり、英国に対してロビー活動を行い、「党派を超えた香港チーム」の結成を促したりしていた。

 つまり、日米英の西側自由主義社会メディアがしばしば取材し、西側世論への発信力の強い人物が狙い打ちにされた格好だ。私は、これは香港の運動家個人に対する弾圧という以上に、西側自由主義社会とそのメディアに対する恫喝、ジャーナリズムに対する宣戦布告だと受け止めている。