2020年8月4日、香港の地下鉄のホームでマスクを着けて歩いている人々。(写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 香港で9月6日に予定されていた立法会選挙の実施が1年延期されると7月31日に発表された。

 建前の理由は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためであり、法的根拠は「緊急法」だ。たしかに7月以降、ほとんど感染拡大を抑え込んでいた香港で急に感染確診者数が増えている。7月の下旬は12日間連続で100人以上の新規感染者が出た。

 だが、1年も延期する必要があるのか。立法会条例の規定では、延期期限は2週間だ。選挙は市民の権利であり義務であり、議会政治の根幹だ。コンサートなどのイベントや会社の会議を延期するのと訳が違う。たとえ延期せざるを得ないにしても、普通は1週間、2週間、あるいは1カ月、2カ月単位で考える話だ。

 誰もがこの選挙延期の本当の理由が「新型コロナ感染拡大の防止」などではないと思っている。香港政府と中国共産党は、今年(2020年)9月に立法会選挙を行いたくない、というのが本当の理由だろう。