JR北やANA、JALに迫る国有化危機

 しかしながら、観光業のバブル崩壊と一蓮托生になる地方経済は状況がまた変わってきます。観光業が破滅的に低迷することで崩壊の危機に瀕する自治体が続出する危険性がありますし、ホテルや旅館のような観光業のみならず、観光客の移動を担うバス会社やタクシー会社など地元の足を支えてきた交通業も次々と破綻しかねません。

 そればかりか、JR北海道のような地元経済の根幹となるような公共交通機関や航空会社も何もしなければ破綻しかねません。

 JR北海道は政府が何も対応策を考えなければ、2020年度を超えられるかどうかすら微妙な情勢に追い込まれるでしょう。2021年度に入っても、なおコロナウイルスの猛威が収まらず経済低迷が続くようであれば、日本航空と全日空すらもどうなるか分かりません。そして、こういった事態の収拾において、我が国がすべての産業を等しく支える財政出動など、どれだけ国債を新発しても無理であるということは考えておかなければなりません。

 さらに悪いシナリオは、地方経済の崩壊とともに破綻企業が続出した結果、地場の地方金融に融資の焦げ付きが連発して、信用保証協会付きではない一般的な貸し出しの不良債権化によって地場の金融機関の破綻が連鎖することです。これを食い止めるには、地域の金融機関を合併させて束ね、受け皿銀行をつくり、そこに公的資金を注入してどうにかする、という以上の解決策は見当たらないのが実情です。

 それでも何とか地方経済の崩壊を食い止め、地元の人たちが仕事を求めて都市部に移動するというような事態を避けるためにはどうすればいいのでしょうか。

 その第一は、雇用の確保による生活の安定のために、公共性の高い企業については5年や10年などの期限を切って思い切った国有化・公社化を進める令和版ニューディール政策を実施することです。地方で大量に発生する失業者とそれに伴う人口移動、地方のさらなる過疎化を計画的に、制御可能な形で進めていくしかないのではないかと思います。

 直接国民にお金をばらまくにしても、たかだか10万円を給付するのに事務手続きで大混乱をきたしたのは記憶に新しいところです。マイナンバーに口座番号が紐づいていなかったなどという初歩的な問題で、給付そのものが遅れ、事務費込みで15兆円も使わなければならなかったという笑えない話もありました。そこへ、MMT政策でさらなるばらまきをしたところで、仕事を失った人たちが生きていくには金額的に不十分ですし、再就職できるまでの間に何回ばらまけるのか、という問題は残ります。