先述の一律10万円の給付金の手続きは、市区町村が窓口になって行われましたが、マイナンバーカードを使ってオンライン申請した住民に対し、受け付けた市区町村側では、申請に不備がないかどうか、職員が手作業で確認する姿が報じられたりしました。郵送による申請に誘導したところも少なくありません。これでは全くオンラインの意味がありません。抜本的なデジタル化が重要です。

政府の電子化は「頓挫の歴史」、だが今やらずしていつやるのか

 電子政府の必要性はこれまでも指摘されてきましたが、あまり進展してきませんでした。典型的なのは、2001年(平成13年)1月にIT戦略本部によって発表された、e-Japan戦略(IT国家戦略)ですが、そこには、「我が国は、すべての国民が情報通信技術(IT)を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向け、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」と明記されています。約15年経っても最先端どころではありません。

 その理由の一つは、古いシステムの統合の難しさがクリアできなかったからです。各自治体、各省庁はそれぞれ独自のシステムを使用してきました。そこには膨大なデータの蓄積があります。

 電子政府化を図るには、これらのシステムを統合して運用できるようにしなければなりませんが、従来のシステムが古すぎて、新しいシステムに移行できなかったり、複数のシステムを上手く統合できなかったりという問題があるのです。

 この壁を突破するには、システムに精通した人材を特に民間から集めて、それらの人の動きをサポートする(政策実現を中でうまく後押しする)官の人材も加えて、そのチームに政府全体に多大なる権限を与えていくしかありません。最高情報責任者(CIO)的地位に一人だけ民間人を入れても機能しづらいことは明らかです。システムの統合・更新では関係する機関の利害が衝突します。金融機関の合併でも、システム統合は非常に揉める問題で、そのせいで経営統合自体が流れてしまうこともあるほどです。ですからこのチームに大きな権限を与え、担当大臣や政府全体が支えて実施する体制をとらないと、日本の電子政府は進展しないでしょう。

 日本は政府に限らず、デジタル化で他の先進国から大きく後れを取っています。ウィズ・コロナを当たり前としていかなければならないこの時代、政府のデジタル化は避けて通れません。いまこそ与野党が協力して、強力に推進していかなければならないのです。