東名高速で起きた、あの痛ましい事故の教訓も法改正に反映

 一方、6月5日には、あおり行為などの妨害運転を厳罰とする、「改正自動車運転死傷処罰法」が、参院本会議で可決、成立しました。

 こちらも、走行する車の前に割り込んで停車するなどの行為を新たに「危険運転」として処罰の対象とし、こうした悪質な行為によって相手にけがをさせた場合は『15年以下の懲役』、死亡させた場合は『1~20年の懲役』に改正され、今年7月から施行される予定です。

 実は、「自動車運転死傷処罰法」の法改正のきっかけとなったのは、2017年6月に東名高速道路上で発生したあおり運転による死亡事故でした。

 パーキングエリアで注意したことをきっかけに逆上した男が、夫婦と2人の子どもが乗ったワゴン車を執拗に追いかけ、最終的に追い越し車線でワゴン車の前に割り込んで停車。その直後、後続のトラックがワゴン車に追突し、子どもたちの目の前で夫婦が亡くなったという悲惨な事故でした。

 被害車の前に割り込んで停車させた男は、危険運転致死傷罪で起訴されました。しかし、危険運転致死傷罪は、「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」が処罰の対象となっているため、「停止」という行為を「危険運転」として裁くことができないと判断され、裁判では高裁から一審に差し戻されたのです。

 そこで、こうした悪質な行為による事故に対しても、実態に即した対処ができるよう、「妨害目的での前方停止」という2つの類型(=罪の対象となる行為)を「危険運転」に追加しようということになりました。

 6月2日、私は参議院の法務委員会に参考人の一人として出席し、これまで約30年にわたって交通事故被害者、遺族の取材を続けてきた立場から、そして、長年クルマや大型バイクに乗り続けて来た運転者の立場から、「供述調書」に頼らない客観的な捜査の必要性など、さまざまな意見を述べてきました。

参考人として、参議院法務委員会で意見を述べる柳原三佳氏(参議院の国会中継サイトより)

 また、私の前には、法政大学大学院法務研究科の今井猛嘉教授、早稲田大学大学院法務研究科の松原芳博教授が、法律の専門家のお立場から貴重な意見を述べられました。