事実を裏付けるものがない、公式な検証もないうちから、政治が動き出す。どこか空気だけで規制を強化する。これだけ早い反応は、この件に便乗して、政治批判を封じ込めようという腹づもりなのではないか、そんな憶測さえ漂っても不思議ではない。SNS上の安倍晋三首相への攻撃や、野党への批判も凄まじいものがある。

 いや、それにもまして、空気だけで政治が動くのだとしたら、日本が戦争に突き進んだ時代の様相と重なって映る。あの時も世論が強硬外交と戦争を煽り、それがいつしか言論や表現の自由を奪われ、規制される方向に動いた。勝算も無視して戦争に突入し、無謀な作戦が繰り返され、最後は竹槍でB-29(爆撃機)に勝てると説いた。

政治は、彼女の死を利用していないか

 本当に彼女は自殺に追い込まれたのか、それがネット上の誹謗中傷と因果関係があるのか、誰も明確に語らないまま、阿吽の呼吸と空気だけで法が変わることは危険だ。今回は言論封殺にもつながりかねない。

 逆に、彼女の死がきっかけで法改正に乗り出すのなら、詳細な検証結果と事実をまず提示すべきだ。そうでないなら、国民の知る権利を侵すことになる。

 22歳の若い女性の死が、政治利用されるようなら、それこそ悲劇である。