大隅半島南東部に位置する鹿児島県肝付町。平均気温17度の温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、町の自慢は内之浦宇宙空間観測所。それに加えて最近は、パプリカ(カラーピーマン)の栽培で町おこしを進めている。ピーマンなのに苦味がなくて糖度が高いため、食卓の人気は急上昇。ところが全国各地と同様、担い手を確保できない。そこで、JA鹿児島経済連は県外に労働力を求める作戦を始めた。

鹿児島県肝付町
キャンピーの故郷

 2008年7月、30代の男女4人が人生の「再起動」を目指し、南国のカラーピーマン農家として出発した。中傳修さん(37)、晶子さん(32)夫妻、武田裕史さん(30)、児島孝太さん(36)は農業に魅せられ、大阪府や愛知県などから肝付町に移住。いずれもJA鹿児島県経済連がホームページなどで全国に呼びかけ、募集した農業研究生だ。

 研究期間は2年。農業に対する固い意志を持ち、研究終了後も肝付町内で就農可能なことが条件だ。夫婦月額25万円、単身者15万円の研究手当を、経済連が支給する。耕地面積は1戸当たり15アール。肝付町の新規就農者研修施設を借り受け、研究生はカラーピーマン栽培に汗を流す。

 経済連はライバル産地と競争可能な商品の開発と、足腰の強い農業の確立を目指し、県外からの就農希望者受け入れを決断した。栽培技術や農業経営を研究してもらい、「明日の担い手」として育成する。

猛暑、害虫、台風・・・「戦い」の連続

真冬でも30度近くに!

 ビニールハウスの中、真冬でも日中は温度計が30度近くを指していた。目に飛び込んでくるのは、赤と黄の2色。カラーピーマンは大きいものだと直径10センチ、重さは180グラムもある。農業初心者が作ったとは思えないほど、色鮮やかな実が並んでいる。

 だが、ここまでの道は平坦ではなかった。太陽が照りつける鹿児島の夏。熱がこもるハウス内は、想像を絶する暑さになり、過酷な作業を強いられる。

 次に、害虫との戦い。天敵を放っても年中発生し、カラーピーマンの病気に絶えず頭を悩ませる。その代表的なコナジラミは、果実や葉に黒い煤(すす)を付けるため、洗浄も一苦労だ。台風シーズンを迎えると、時間との戦いも勃発する。

 農業への熱い思いと収穫時の喜びが、つらい作業の支えとなり、児島さんは「初めて出荷した時、市場に出せるものを作れたんだと思い、感動した」。武田さんも「出来た実を収穫して出荷する作業が楽しい」と笑顔で話す。