異例の警察による逮捕の背景には何が

 ただ一般的に言って、警察などの治安当局がSARAを問題視して誰かを逮捕することはあまりなく、宗教関係者や人権問題関係者、あるいは政治指導者、社会学者などが、社会の根底、国民の潜在意識の中に存在する課題として問題提起や説明されることが大半だ。

 そうした中での今回の逮捕劇。直接の容疑はITE(電子情報商取引法)違反だが、これまで同法違反で逮捕、あるいは検挙された報道関係者は名誉棄損容疑による14人で、SARAに関連しての逮捕はディアナンタ記者で3人目、非常に少ないのが現実だ。ただし裁判の結果、同法違反で有罪となれば、最高で禁固6年の刑となる可能性がある。

 しかし、今回の件で明らかになったのは、タブーを犯してしまった記者を逮捕したから事態が収束する、というわけではないということだ。むしろ、ディアナンタ記者が逮捕されたことで、記事を巡る騒動が大きくなった。そのため、責任を問われたメディアグループの「クンパラン」の編集幹部は、地元メディアなどに対して「パートナー社のウェッブ報道の内容にまで我々は責任がない」として責任回避に動きだしているという。

 そうなることが予見できていたからこそ、報道とSARAの問題については今回も報道協会などが解決に当たっていた。そこに警察が記者逮捕に乗り出したことで「問題がさらに大きくそして複雑になった」(報道協会)。警察が動いた裏に何らかの糸や働きかけがあったのか。同報道教会では、ジャカルタの国家警察本部に対して、「南カリマンタン警察による今回の対応について内部調査をするべきだ」と要望を提出する事態となっている。