騒ぎが大きくなると問題の発言を引用された宗教関係者は、「自分はそんなことは一切言っていない」と内容を否定し、ディアナンタ記者による捏造を示唆した。そのことも、記事公開から半年も過ぎてから、警察が動く一因になったようだ。

企業と住民の土地問題記事が民族対立を扇動

 ところで、この記事の中で不正な方法で土地収用をしているとされたジョリン社は、南カリマンタン州出身のビジネスマン、アンディ・シャムスティン・アルシャド(俗称ハジ・イサム)氏の所有する会社なのだが、そのイサム氏はブギス人という異なる民族であることから、記事の公開直後から「ブギス人とダヤック人の間の緊張を高め、紛争を招く可能性がある」として大きな問題となっていた。

 そのためこの件は、同州の報道協会が間に入って解決の道筋が探られ、2020年2月の時点で「確かにこのディアナンタ記者の記事は民族間の緊張を高める偏見に基づく内容と言えなくもなく、不適切である」と判断、ディアナンタ記者が記事をアップした「バンジャルヒット」などとパートナーとして提携する地元メディアグループ「クンパラン」の編集長に対して警告するとともに、「責任の所在と記事掲載の詳細の説明を求める」と通告したことで「一件落着」したはずだった。

 それが突如、警察が捜査に乗り出し、しかも記事を書いた記者を逮捕するという事態になってしまったことを不可解に思う向きもある。

 その一方で、今回の記者逮捕にはジョリン社のイサム氏が関係していることから、地元では、2018年6月10日にコタバル市の収容施設で死亡した記者、ムハンマド・ユスフ氏の事件との共通点を指摘する見方もある。

 ムハンマド記者は、今回のディアナンタ記者と同じように、地元住民とイサム氏が所有する別の会社との間の対立を取材して記事を執筆。それがITE法違反の名誉棄損罪に問われて身柄を拘束され、収容中に死亡した。