4月22日、陝西省の西安を訪問した習近平主席。インドネシアや韓国からの批判をどう受け止めているのだろうか(写真:新華社/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 中国の漁船で乗組員として働いていたインドネシア人船員が、操業中の海上で3人も死亡し、その遺体が海中に投棄されていたことが明らかになった。遺体を海に投げ出す動画が流出したことで、現在、重大な人権問題となりだしている。

 この動画は同漁船が4月27日に帰港した韓国・釜山で韓国のテレビ局が入手し、5月6日にテレビで放映されたことで公になった。そのため、亡くなった船員の母国インドネシアだけでなく、韓国でも中国漁船が引き起こした大きな問題として注目を集めている。

まるで現代の『蟹工船』

 現在この動画はYouTubeなどで、モザイクがかかった状態ではあるが誰もが視聴できる状態にある。「Chinese fishing boat」「Indonesia」などと検索すれば、すぐたどり着けるだろう。

 釜山の韓国海上警察は、この中国漁船の船長などに対する事情聴取を進めており今後刑事事件に発展する可能性もある。

 同漁船に乗り組んでいた残りのインドネシア人船員3人が明らかにしたところによると、彼らは1日18時間も働かされるのが常態化しており、30時間ぶっ続けで労働を強制されたこともあると訴えているという。さらに操業中は、インドネシア人船員は食事の際以外は座ることも許されなかったという。

 彼らと中国人船員とは扱いに差があったようだ。

 中国人船員は陸上から持ち込んだボトル入りの真水を飲むことができたが、インドネシア人は海水ろ過した水を飲むことを強要されていたという。もっとも最近の3カ月間はそのろ過機も故障しており、海水を飲まざるをえない環境にあったそうだ。

 船員Aは、海水を飲むと「めまいがして喉から変な粘膜が出るようになった」と健康被害が深刻になったうえ、食事も粗末で6時間ごとにわずか10分から15分という短時間の食事時間しか与えられなかったと訴えている。その状況は、小林多喜二の小説『蟹工船』で描かれた、労働法も人権も無視の、タラバ蟹漁船での非人間的実態を彷彿とさせるものだ。こうした過酷な労働環境が原因で、インドネシア人乗組員の中から体調を崩す者が相次いだという。