認定された処理業者はわずか5社

 もちろん、中国もEVバッテリーのリサイクルについては考えている。

 中国政府は2017年に「新エネルギー車の動力バッテリーのリサイクル管理のための暫定措置」を制定、メーカーの責任として「回収ネットワークの構築」、バッテリーの所有者責任として「廃バッテリーを回収センターへ持ち込む」旨が盛り込まれている。

 また同年に、「新エネルギー車のパワーバッテリーリサイクルにおけるトレーサビリティ管理に関する暫定規定」も打ち出し、自動車メーカーにリサイクルプラットフォームの提示を求めている。

 さらに、電池回収を推進するため、中国政府は2019年に「新エネルギー自動車廃バッテリーの総合利用に関する仕様条件(2019年版)」、およびEV廃バッテリーの回収業者と名乗れる基準を定めた「新エネルギー自動車総合利用業界基準(2019年版)の公表管理のための暫定措置」を公開、回収企業に必要な能力と資質を明示した。

 その結果、2020年1月時点で「電池回収」を事業に含めている企業は3000社ほどに増えた。

 また、時を前後して、2018年9月に中国工業情報化部(工信部)はEV廃バッテリー総合利用規範認証を得たホワイトリスト企業を公開した。その数は5法人である。

 もちろん、法人数が少なかろうと、処理能力があれば問題ない。事実、先の5社が廃バッテリーをリユース・リサイクルできる能力は2018年時点で年間47万7500トンとされている。ただ、2018年に5法人が処理した廃バッテリーはたったの5000トンに過ぎないという指摘もある。

 では、残りはどこに行ったのだろうか。それは、ホワイトリストに載っていない回収業者か回収したか、闇の中である。

 中国では、基本的に車の売買や修理などは「4S店」と呼ばれるカーディーラーで行われる。EV購入後、バッテリーが寿命を迎えた場合、オーナーは4S店を訪れ、店員に処理を依頼する。処理を依頼された店員は、そのまま車を引き取る(もしくは電池を交換する)。ただ、2017年時点でEVバッテリーの回収ルートは存在せず、各店舗それぞれで処理されていたという。

 その後、2018年に北京で「新エネルギー車の全国監視と電力貯蔵バッテリーのリサイクル利用の包括的な管理プラットフォーム」なる機構が設立されたことで、廃バッテリーをバッテリーメーカーへ発送するというルートが明示された。ただ、廃バッテリーを自己流で処理する業者もおり、2020年に予測される20万トンのバッテリー回収には遠く及ばない。2018年の動力バッテリーの回収量は推定破棄量のわずか7.4%に過ぎない。

廃バッテリーが闇に消える理由

 なぜ廃バッテリーが闇へ消えるのか。理由を辿ればおおよそ次に3つにたどり着く。

 まず技術である。リユースにせよリサイクルにせよ、初期のEVバッテリーには統一基準がなく、各メーカーがそれぞれの基準を作った。その結果、解体およびリサイクルのために、専門的な機器と人員が必要だ。

 次に収益である。廃リチウムリン酸鉄リチウムバッテリーをリサイクルするにあたり、最も広く使用されている湿式法のコストは1トンにつき約8500元。だが、リサイクル材料の売値は1トンにつき約8100元と約400元の損失が出る。三元系リチウム電池の方が利益率はやや高いが、大規模なリサイクルはまだ先だ。

 最後に資格の問題である。現在、中国にリチウム電池のリサイクルのための規制はなく、ホワイトリストに登録された法人はたったの5社だ。しかも、ホワイトリストに登録されなければ回収ができないわけではない。つまり、闇回収業者を規制できていないのだ。