(篠原 信:農業研究者)
子育ては親がやるものだ。子育てに関与するのが許されるのは、他に学校の教師やカウンセラーくらい。赤の他人は子育てに口を出してはいけない、と思われている。
しかし私は、赤の他人(第三者)は子育てにとても重要な役割を果たす存在と考えている。赤の他人は、親も教師も専門家も決してマネのできない効果を子どもにもたらすことができる。本稿では、普通の子育て本ではまず出てこない「赤の他人による子育てアシスト」について考えてみたい。
「この子は問題児」の悪循環
まずは、私自身が体験したあるエピソードを紹介しよう。
その子は、家にも学校にも居場所がなかった。学年最下位から片手で数えられる順位の成績で、学校では問題児扱い。先生から厳しい姿勢で臨まれ、その子に責任のないことまでその子のせいにされてしまう悪循環が続いていた。家でも成績のよい妹たちにバカにされ、親に学校での悲しい出来事を打ち明けても「お前が悪い」と叱られる始末。どこにも、自分の心が休まる場所がなかった。
私がその子の面倒を見るきっかけとなったのは、親御さんが「お手上げだ」と私に相談してきたことだった。家に行ってみた。その子が何か話すと「それはお前がきちんとしないからだろ」と、口を開けば叱られることが「習慣化」していた。どうやら学校の先生からも同じ扱いを受けているらしい。一度、悪循環を断つ必要があるな、と感じた。