安倍総理は2018年3月の未来投資会議で、「2020年東京オリンピック・パラリンピックで自動運転を実現する。信号情報を車に発信し、より安全に自動運転できる実証の場を東京臨海部に整備するなど多様なビジネス展開を視野に一層取組を強化する」と発言している。

 この実証試験は、内閣府が中心となり、関係各省庁、民間企業、大学・研究機関等が連携する「戦略的イノベーション創造プログラム」(通称「SIP」)の一環である。オールジャパン体制による自動運転技術を世界に向けて発信するため、国が主導で計画を進めた。

国の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)による東京臨海部での自動運転実証の英語版説明パネル

 2014~2018年度が法整備や技術の基盤をつくる第1期とされ、2019年度からは通信との連携を主体とする第2期に入っている。今回延期が決まった実証試験は、東京五輪を見据えて行われるいわば第2期のハイライトであった。

トヨタの自動運転実験の様子。トヨタの説明会での映像より(筆者撮影)

現実を直視するようになった技術者たち

 実証実験の延期は、今後の自動運転の実用化に向けてどのような影響を及ぼすのか?

 筆者はこれまで、SIP自動運転実証に関わる様々な分野の企業に定常的に取材してきた。その経験から言うと、自動車メーカーの技術者たちは今回の延期に対して冷静に対応していると思う。