写真:つのだよしお/アフロ

 日本の役所は、前例がないと何もできないところです。

 いま直面しているのは、世界のどこにも前例のない「新型コロナウイルス肺炎」のグローバル・パンデミックです。

 日本の役所は、当然ながら対処できておらず、政策に至っては誰の目にも明らかなように右往左往、どうにも定まりません。

 前例がなければ、前例に代わるものとして、何か「権威ある」神聖にして冒すべからざるものを奉らないと組織が動きません。

 かつて22年前、私が東京大学に着任した直後には、政策というと米国からの「対日改革要望書」に沿って作文すれば、スムーズに文書が回るという状況がありました。

 いまは、そのような指導もなく、独自に新型コロナウイルス対策を立てねばなりません。

 専門家委員会その他「なぜなし」の天下り諮問組織を作って対処しようとしていますが、そこから出てくる議論の水準もさりながら、その理解、いや誤解、曲解の仕方で、ほとんど事態を損ねつつある。

 そういう状態が現在進行形で目撃していると考えれば、現状をよく解釈できることでしょう。

 対人接触「8割削減」という言葉の意味を日本社会は理解していません。

 先に結論を書きます。