大勢が集まる講義風景は歴史上のものになる可能性もある

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、今年新入学した学生たちが「入学式」で迎えられていないまま、4月を終わろうとしている、という声を耳にしました。

 大学としては「感染予防」が第一で、それどころではなかったというのが本音かと思います。

 しかし、中学、高校生にとっても、今までと違う校舎に通って、気持ちも新たに新生活を送るはずの区切りがつかず、中途半端な気持ちのまま、ちっとも中学生になった、高校生になったという実感が湧かないのも、当然のことと思います。

 そこで、新入生にエールを送る形をとって、学生諸君、あるいはフレッシュマンの皆さん、そして若者たちのご両親、ご家族にもお読みいただくのを念頭に、2回ほどに分け入学式の新入生祝辞として、難局に向き合う若い世代へのアドバイスを記してみたいと思います。

 私の祝辞では物足りないでしょうが、かつて15年ほど前、30代後半の数年は、総長や副学長、学術会議会長などの名義でアンカーライターを務めていました。中身はそれなりにホンマモンとしてお届けできます。 

 普段はあえて、自分の等身大に崩して記す部分を入れていますが、今回はやや格調高めでお送りしたいと思います。

新しい時代への転換期

 新入生の皆さん。

 入学おめでとう、心からお祝いと共に、私たちのキャンパスの新しいメンバーとして、皆さんお一人お一人を歓迎します・・・。

 と祝福したいのですが、実際には新型コロナウイルス感染症の流行によって、物理的なキャンパスに皆さんをお迎えすることができません。

 このことを非常に残念に思っています。大学は、もちろん講義やゼミナールも大切ですが、一生の友人を得ること、友達と遊び、あるいは真剣に議論し、様々な出会いを通じて、心を養うことも大変重要な、ほかでは得難い青春の果実であると思います。

 新型コロナウイルス感染症は、決して克服できない病気ではありません。ワクチンが確立され、世界的に普及すれば、このウイルスに関しての伝染病は克服されます。

 ただし、それには1年以上、最も時間がかかるなら3年程度の時間を要する可能性も考えられます。

 皆さんは、今回の新型コロナウイルスに先立って世界的に蔓延した SARSmMERSの名をご存じでしょう。

 MERSの方は、いまだ十分なワクチンが確立されていません。