山東省青島市の軍港で行われた中国海軍の新型駆逐艦「南昌」の就役式典(資料写真、2020年1月12日、写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 インド太平洋地域の安全保障の要である米海軍の4空母に新型コロナ感染が広がり、東アジア地域における米海軍のプレゼンスの空白が広がったことで、中国人民解放軍の挑発がエスカレートしている。単なる国内の不満を外部に向けるためのパフォーマンスとは思えない激しさであり、注視しておく必要がありそうだ。

「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」

 ぎょっとさせられたのは、解放軍東部戦区陸軍のSNS・微信における公式アカウント「人民前線」が4月15日の国家安全教育日に発信した「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」のメッセージだ。印象的なので一部翻訳して紹介する。

「『幻想を捨て、戦争を準備せよ!』 この文章は、毛沢東が新中国建国前夜に発表した一篇の文章のタイトルだ。毛主席はかつてこう言った。『我々は平和を愛する。だが闘争もって平和を求めることは平和的に生き残ることであり、妥協を通じて平和を求めることは平和的に死ぬことである』。

・・・我々は1840年のアヘン戦争以来、列強によって迫害を受け、土地を割譲され、不平等条約によって数百もの理不尽な要求をのまされたことを忘れることはできないのである。

 近年、一部学者は中日甲午戦争(日清戦争)で国運が逆転したことについて、清朝末期の軍隊が惨敗した教訓を検討し反省し、当時の官僚、軍事が戦争に直面しても危機意識が欠如していたことが重要な要因だとしている。

・・・『我々は長きにわたって重要な政治、外交、安全、軍事のリスクに直面している。・・・軍事手段を終始奥の手として維持しておくことを決して忘れてはならない』と習主席は民族復興の偉業を実現するという高みに立って、この伝統的で重厚で戦の栄光に輝く人民軍隊に絶えず警告を発してきた。

 平和に栄える世は軍人にとって最高の褒賞であるが、太平の世に呆けてしまうことは軍隊の最大の敵である。戦争に従うべき規律はあるが、いつ起きるかはいかなる方法をもって対応しても、往々にして非常に不確実なものだ。“秒殺”の時代の現代戦争においては、時間上、空間上、躊躇している暇はますますなくなっており、準備不足が先手攻撃の機会を失って、甚だしきはやられてしまうこともある。十分に戦争前の準備をすることこそ、戦争の主導権を握るカギなのだ。