3月17日、アメリカ・オレゴン州ビーバートンの自宅で仕事をするキム・ボートンさん(左)。彼女はスポーツウェアメーカー「コロンビア」で働いている。傍らでは6歳と7歳の娘が、美術作品の制作に取りかかっている(写真:AP/アフロ)

(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)

 新型コロナウイルス対策で外出自粛要請が出ている日本。

 ウイルスの感染拡大を防ぐには「ソーシャル・ディスタンス」で人との距離を開けて過ごすのが有効であり、職場などできる限り人が密に集うシチュエーションは避ける必要がある。

 そこで今推奨されているのがテレワークだ。文字通り、「テレ(遠隔)」で「ワーク(働く)」するという意味なのだが、日本ではテレワークがこれまでも推奨されてきてはいたが、現実には多くの企業がついていけていなかったのが実態だ。

 経団連が2月28日~3月4日に行った調査では、新型コロナ対策でテレワークや在宅勤務を推奨している企業は、68.6%に上っている。一方で、同じ時期に厚生労働省が個人を対象に行った「新型コロナ対策のための全国調査」では、感染予防のために「仕事はテレワークにしている」との回答はわずか5.6%だった。つまり、経団連に加盟するような大企業ではかけ声こそ上がっているものの、経済界全体を見渡してみれば働き手の間にまったく普及していないという実態が明らかになっている。

 日本では遅々として進まないテレワークだが、海外ではどのような状況なのか。いくつかの国を探ってみたいと思う。

職場支給のPCにはカメラもマイクもない、という日本

 まず日本でそもそもテレワークが広がらない理由はどこにあるのか。

 一つには、従業員が会社外で仕事をするためのパソコンやデバイスがないという事情がある。スマホだけではできることは限られており、やはり仕事をするにはパソコンやタブレットなどが欠かせない。大手なら企業が用意してくれるかもしれないが、中小企業ではそうもいかない。また、価格も安いものではないため、「自腹を切ってまで用意したくない」という人も少なくないだろう。