写真:長田洋平/アフロスポーツ

 新型コロナウイルスの感染拡大によってこれまでの常識が変わりつつある。その中で組織を預かるリーダーはどう振るまい、どう行動すればいいのか。監督として早稲田大学ラグビー蹴球部を大学選手権2連覇に導き、現在、日本ラグビーフットボール協会で理事を務める中竹竜二氏に話を聞いた。(聞き手、結城カオル)

コロナ危機は世界恐慌クラスの経済危機になる

──新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、人の移動が止まったり、サプライチェーンが寸断されたりするなど、経済活動は機能停止状態にあります。誰もがサバイバルモードになる中で、経営者やチームのリーダーはどのように振る舞い、行動すべきなのでしょうか。

中竹竜二氏(以下敬称略):大きな話から先にすると、今回の新型コロナウイルスの感染拡大は戦後最大級の有事だと思います。それこそ1930年代の大恐慌クラスの経済危機になるでしょう。誰も経験したことのない有事ですから、先のことは誰にも分かりません。ただ、先が読めない時代だからこそ、現状を正しく認識し、その状況に自ら適応する姿勢が必要になります。

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、英レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターを務めた後、2019年に理事に就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを務め、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務した。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行うチームボックスを設立。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。

 私が代表を務めるチームボックスでは、企業のリーダー育成や組織コンサルティングを手掛けています。クライアントを見ても、コロナ危機に比較的うまく対応している組織は、リーダーが今の危機的な状況にプロアクティブ(前向き)であると感じています。もちろん、厳しい状況には変わりありません。しかしその中で、ポジティブな要素を探し、前向きに対応している。逆に世の中の変化に受け身のリーダーは、ネガティブ思考にとらわれて、不安で身動きが取れなくなっている。

 例えば、外出の自粛要請によって多くのビジネスパーソンがリモートワークを余儀なくされています。これを、「会社に行けなくなって対面の密なコミュニケーションが取れない、困った」と考えるのか、それとも「通勤時間がなくなった分、可処分時間が増えた。オンラインですぐに打ち合わせができるので、会議が効率的になった」とポジティブに考えるのでは、全然違います。

 今回のコロナ禍はこの先も長く続くでしょう。であれば、組織のリーダーはポジティブな方向に意識を振り向けた方がいい。